2026年5月末、ブライトンのビーチに突然「サウナだらけの村」があらわれた。
小石の浜に並ぶ20以上の小屋。白樺の薪が燃えるにおい。そして海から上がってくる人、人、人。
あれは、いったい何だったのか。
2026年5月29日から31日まで、Banjo Groyneという海沿いの一角で開かれた「Brighton Sauna Festival 2026」。イギリスで開かれたサウナフェスとしては過去最大級で、3日間で1,600人以上が集まったそうです。僕もその中の一人。潮風と煙にまみれて、正直、頭のどこかがバグりました。
ビーチでサウナ? 5月のイギリスってまだ寒くない…?
それがね、むしろ最高だったんですよ。寒い海と熱いサウナ、この落差が効くんです。当日の様子、順番に話しますね。
当時のBrighton sauna festivalのインスタリールです。
ホテルやジムの殺風景なサウナとは、まるで別物だった

サウナって聞くと、多くの人はホテルやジムにある、あの小さくて無機質な部屋を思い浮かべると思うんです。タイル張りで、換気扇の音だけがする、あれ。
ブライトンのそれは、真逆でした。
足元は海辺の小石。頭上には青い空。薪ストーブから流れてくる白樺の煙のにおいと、イギリス海峡の潮の香りが混ざる。BGMは、あの音楽フェス「Bestival」を立ち上げたRob da Bank氏がキュレーションしたセット。夕方からはDJのライブまで入って、もはやビーチパーティーでした。ととのうっていうより、祝祭。つまり野外ロックフェスティバルに野営しているテントがサウナになったかんじ。
会場は1日を6つの時間帯に分けて演出されていて、これがまた面白かった。朝は「RISE」で静かに瞑想的に目を覚まし、昼は「FLOW」「DRIFT」でゆるく交流、夕方の「TIDE」「GLOW」はイビサっぽいチルな音楽、そして夜の「SUNSET」でDJが上げていく。同じ会場なのに、時間で顔がまるっきり変わるんですよね。
イギリス中から集まった、変態的サウナたち

で、いちばん語りたいのがこれ。会場のマップには「FIND A SAUNA」として21区画、さらに「FIND A TENT」として6つのブースが載っていて、デヴォンやダラムみたいな遠方からも小屋が集結していました。ひとつずつ個性が立ってて、見て回るだけで楽しい。
ホストは地元の「Beach Box」、そして名物の巨大サウナ
マップの①〜④を占めていたのが、地元ブライトンのBeach Box Spa。今回のホスト役です。薪ストーブのサウナに水風呂、プロによるアウフグースまで、ここが会場の中心でした。

アウフギーサーがポップスに合わせて踊ったり、狂ったりで無茶苦茶暑い。でもそのイベントにならんでまで入ったサウナ室なので、特に2階に座っていると途中ででるわけにもいかない😅
そして忘れちゃいけないのがThe Hot Box系の巨大サウナ。最大25人が一度に入れる木の箱で、見知らぬ人同士がぎゅうぎゅうで一緒に汗をかく。この「知らない人と汗を流す」ソーシャルな感じ、日本の銭湯に通じるものがあって、僕は懐かしさのあまり、ニヤニヤしてました。
馬運車、ピンク、火山岩ストーブ。とにかく振り幅がすごい

ホヴから来たSo.Sauna(マップ⑪)は、なんとヴィンテージの馬運車(ホースボックス)を改装したサウナ。中で水風呂に入れて、外ではオーガニックのコンブチャやオレンジをふるまっていて、子ども連れの多世代が楽しそうにしてました。
「FIND A TENT」のBに載っていたSaunadelicは、サセックスのホヴ・ラグーン発。北欧デザインの木のサウナに、フィンランドのNarvi社製の火山岩ストーブを積んでいて、熱の波が本気でした。ロウリュのキレが違う。
⑧のThe Pink Saunaは、その名のとおり鮮やかなピンク。完全にSNS映えを狙った、いまっぽくて陽気なやつです。写真を撮る人でいつも賑わってました。
残りのサウナたちも、ぜんぶ主役級
正直、全部を語り尽くすには紙面が足りないんですが、載っていた顔ぶれをちゃんと残しておきます。
⑤Saunaverse、⑥Nomadic(湖での泳ぎやサウンドバスまでやる自然派)、⑦Sauna Aid、⑨Aqualine、⑩Raising Embers、⑫Sauna Del Soul、⑬Tempa Steam Bus(バスを改装したやつ)、⑭Flow 1と⑮Flow 2、⑯CBS Betsy、⑰Holt、⑱Finnmark、⑲Somewhere Sauna、⑳Sauna Box、そして㉑Ben Reville Design。
テントのほうも忘れずに。ABreathways、BSaunadelic、CSauna Folk、DBast Lov、EBast Bjork、FBast Haver。呼吸法のワークショップからサウナグッズまで、周辺の体験も充実してました。
これだけの数のサウナが、一つのビーチに、一列に並ぶ。壮観でしたよ。ほんとに「村」だった。
そんなに数があったら、どれに入るか迷いました。
結局半分ぐらいしかまわれませんでしたが、実はコンプリートしてます。その理由はまた後日😅
迷います(笑)。
でもね、サウナそのものより、中でやってた「リチュアル」が本当にすごかったんです。
ただ汗をかくだけじゃない。「リチュアル」という芸術

ブライトンのサウナが特別だったのは、「入って終わり」じゃなかったこと。サウナの中で、専門家によるリチュアル(儀式)が行われていて、これがもう、パフォーマンスアートの域でした。
アウフグース:タオルで熱波を「演出」する
まずアウフグース。サウナマスターがエッセンシャルオイルを垂らした蒸気を、大きなタオルでダイナミックに送るショーです。音楽と照明に合わせて動くから、熱いというより、演劇を観てる感覚。オイルの香りが波みたいに押し寄せてきて、体感温度がぐっと上がる。汗が一気に噴き出すあの瞬間、みんなで「うおー」ってなるんですよ。
ウィスキング:白樺の枝で、やさしく叩かれる
もうひとつがウィスキング。ヴィヒタと呼ばれる白樺やオークの枝葉の束で、体を優しくパシパシ叩いてもらう伝統的な施術です。血行とリンパの流れが良くなるらしくて、叩かれるたびに葉っぱの香りがふわっと立つ。痛くはなくて、むしろ気持ちいい。人にケアしてもらう時間って、それだけで贅沢なんだなと思いました。
テントサウナと薪

テントサウナも堤防に三つぐらいでていたのですが、入ったら全然温度が低くて、満足できないとがっかりしました。ただ二日目に私がいったときに理由がわかりました。
温度は自分で調整しないとだめだということです。テントサウナは無人なので、自分で薪を焚べないといけないようです。がんがん薪をいれていくと、無茶苦茶暑くなり、またロウリューも自分でする、セルフのサウナ。
テントサウナ本当にほしい。ただ車や、庭がある家にすまないとだめですね。あと組み立てるのは面倒そうですが。
ブルームーンの夜、海に飛び込んだ

ハイライトは最終日、5月31日の夜。
この日、珍しい「ブルームーン(満月)」が空にかかっていました。月明かりに照らされたビーチで、熱々のサウナから飛び出して、そのままイギリス海峡へダイブ。冷たい。というか、痛いくらい冷たい。でも、そのあとシダーウッドの香りが漂う温かいサウナに戻ると、全身がじわーっとほどけていく。
熱い、冷たい、また熱い。この温冷交代浴を、満月の下でやる。参加者のあいだで「Pure magic(純粋な魔法)」って言葉が飛び交っていたけど、大げさじゃなかった。海と月とサウナ。この三つが揃った夜のことは、たぶん一生忘れないと思います。
3日で1,600人。イギリスのサウナ文化はここまで来た

主催はBritish Sauna Society。ディレクターのMark Lamb氏は「ブライトン初のサウナフェスが大成功して、初心者からベテランまでたくさんの笑顔が見られた」と話していました。3日間で1,600人超えというのは、イギリスのサウナフェスとしては過去最大規模だそうです。
ここ数年、イギリスの海沿いでは「Coastal wellness(沿岸のウェルネス)」がじわじわ広がっていて、モバイルサウナに入って冷たい海に飛び込む、というスタイルが定着しつつあります。ブライトンのこのフェスは、その流れの一つの到達点というか、集大成みたいなイベントでした。
面白いのが、これが「一人で整う」ためだけの場じゃなかったこと。25人乗りの箱でぎゅうぎゅうになったり、知らない人とコンブチャで乾杯したり、DJで一緒に踊ったり。サウナが、人と人をつなぐ社交の場になってた。ソーシャルなサウナ文化、って言えばいいのかな。
で、ここまで書いておいてなんですが。ロンドンで日本のスーパー銭湯を開きたいと本気で思ってる僕としては、正直、うらやましくて仕方なかったです。日本の「みんなで裸で汗をかいて、ちょっと素の自分に戻る」あの感じと、ブライトンのビーチで見た光景は、根っこのところですごく似てた。国も文化も違うのに、人が湯や熱に求めるものって、案外おなじなのかもしれません。
また来年もやるなら、僕はきっとまた小石の上に立っていると思います。今度はサウナグッズを担いで、店を出す側で参加できたら最高なんだけどな。
実は公式には5月31日が最終日となってましたが、6月1日にもサウナ村は開いてました。その話は次のブライトンサウナサミットのブログに書きたいです。


